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ジッターとはデジタル信号の時間軸の揺らぎのことでレコードプレーヤーでたとえると ワウ・フラッターに相当するものです。また偏差は回転数の正確さに相当します。もちろん
揺らぎの量、偏差はレコードプレーヤーに比べれば非常に少ないものです。ここでジッターのイメージを図1に示します。
図1)
図1に示したようにジッター量は時間なので単位はS(秒)で、また周期ごとに変動するので変動量を平均値化してジッター量としています。デジタルオーディオの領域での量としてはpS/nSで表されます。
また周波数偏差は率(比)なので単位は%で デジタルオーディオ用発振器では ppm で表されます。実際のクロックには、ジッターが存在します。
一般的なデジタルオーディオ機器のシステムクロック(マスタークロック)では数ps〜数百psオーダーのジッターが存在しています。
デジタルオーディオシステムでは、クロックが必要となります。デジタルオーディオ信号を機器間で伝送するための規格化された共通の
インターフェースがあります。これがデジタルオーディオI/Fです。
規格には民生器では良く知られたS/PDIFの光または電線による伝送(75Ω同軸ケーブル)など があります。S/PDIFは、ステレオ(2チャンネル)の最大24ビットPCMデータと各種の補助データをシリアルデータとして伝送しています。
再生機器でクロックの抽出を容易にするためバイフェーズマークの変調方式が採用されています。
このインターフェース部でもジッターが発生していて数百pSから数nSのオーダーのジッターに なります。 CDトランスポート・iPodトランスポート・PCオーディオ(USB、S/PDIF)出力と、デジタルオーディオI/F両方で発生するジッターがD/Aコンバーターに影響を与えています。
デジタルオーデイオI/Fのジッターを定量的に測定できるのがAudioPrecision社の測定器「SYSTEM
TWO DUAL DOMAIN」と「SYS-2722」で測定例を図2に示します。
JITTER APWIN画面
JITTER DV6500
図2) SYS-2722でのジッター測定画面 右下SYS-2722,左下ユニバーサルプレーヤー
測定器自身のジッターは246pS、ユニバーサル・プレーヤーのジッターは2.16nSで相当ジッターが多いことがわかります。
サンプリングクロックのジッターにより、サンプリング間隔が変動してしまいます。すなわちD/A変換時のジッターは、サンプリング間隔を変動させてしまいます。
サンプリング間隔が変動すると、オーディオ信号に対して時間軸方向の誤差が加わり、結果ジッターは本来のオーディオ信号を歪ませてしまう結果になります。
すなわち全高調波歪率やS/N比などのオーディオ性能が劣化してしまいます。音楽の再生においては、音質が変化(劣化)してしまいます。図2にジッターによるオーディオ信号の劣化のイメージを
示します。
図3) ジッターによるオーディオ信号の劣化の模式図
図3でS1,S2,S3,S4...は理想サンプリング時刻でJがジッターによるサンプリング時刻のずれを表して
います。S1での信号の高さ(振幅)とJでの信号の高さの差がジッターによる誤差で上の図の信号に比べ
下の図は信号周波数が高くなると同じジッター量でも誤差が大きくなることを示しています。
クロックのジッターが問題になるもう1つの理由は、各種のサンプリング周波数(fs)が用いられるようになったことで(民生分野では32kHz〜192kHzのfsが用いられている)
各種メディアのfsに対応するために何種類かのクロックが必要であり、
再生機器によってはマスタークロックとしてfsの整数倍ではない1個の基準クロックから
44.1KHz系と48KHz系の2系統のクロックを出力できるICが使用されています。
このICで生成したクロックにはfsの整数倍の水晶発振器で生成したクロックに比べ、大きなジッターが含まれていることが多いことは確認しています。
ここでは再生装置としてユニバーサル・プレーヤーでCDを再生しS/PDIFピンジャック出力から D/Aコンバータへ入力しそのアナログオーディオ出力の周波数成分を分析(FFT)しています。
デジタル入力インターフェースIC(DIR)は低出力ジッターを謳っている(公称50pS)製品で、 D/AコンバータIC(DAC)はジッター耐性を謳っている32ビット対応の製品を使用しているますので、
これらのセールストークを信用するならばジッターの影響は受けないはずです。 図4、図5に10KHzの0dBFSの信号を再生したときのデータを示します。
図4) 10KHz 0dBFSの信号をCDで再生(S/PDIF→DAC)
図5) 測定器SYS-2722の10KHz 0dBFSの信号を再生(S/PDIF→DAC)
図4と図5を比較するとCD再生時には10KHzの左右にレベルが大きくなっているのが
明らかです。これはジッターの影響で再生信号が劣化(変調を受けている)していることを
あらわしています。
図6、図7に1KHzの0dBFSの信号を再生したときのデータを示します。
図6) 1KHz 0dBFSの信号をCDで再生(S/PDIF→DAC)
図7) 測定器SYS2722の1KHz 0dBFSの信号を再生(S/PDIF→DAC)
図6では図7とくらべ1KHz周辺でレベルが大きくなっていないのことからジッターの影響を受けていないことがわかり、図3で
示した理論にあっています。
図8にユニバーサルプレーヤーでのCD再生10KHzの0dBFSの信号のデータを示します。
図8 10KHz 0dBFSの信号をCDで再生(S/PDIF→MD3300)
10KHzの左右にレベルの盛り上がりが無いことでジッターによる影響を受けていないことがわかります。
図.9に図.8と同じDACを使用し、プレーヤーのS/PDIFとDACのデジタル入力間にMJR-5を
入れたときのデータを示します。
図.9 10KHz 0dBFSの信号をCDで再生(S/PDIF→MJR-5→DAC)
10KHzの左右にレベルの盛り上がりが無いことでジッターによる影響を排除していることがわかります。
◇CDプレーヤーでのクロック交換
ジッターの少ない発振器+低リップル・低ノイズ電源を使用すれば効果がある可能性はあります。
ただし、ジッターが少ないということは先に説明したように精度と直接関連はありませんので
周波数精度1ppmの発振器がジッターが少ないとはいえません。
また出力回路、部品によってもジッターは悪化する場合があります。
◇iPodトランスポートのクロック交換
WADIA170の12MHzのクロックを交換してもUSB-DAC IC PCM2705 内部でジッターが
発生しているので効果は出せないと考えます。
◇S/PDIF波形整形器
波形の立ち上がりを良くしてもトランスポートからのジッターがあればそのままジッターに
なります。
測定データの誤差程度には改善されます。
ちなみに一般的な(ジッター測定モードをもたない)オシロスコープの波形観察ではジッターは
測定できません。
◇D/Aコンバーター内でのサンプルレート・コンバータによる改善
ジッターの影響を排除する効果があります。今後のPCオーディオソースを考えると
音源ソース作成時、PC内部サンプルレート変換などとの何度もデータが変換される影響は
考慮する必要はあります。
◇D/Aコンバーター内でのメモリーバッファでのジッター低減
ジッターの影響を排除する効果があります。現在販売されている製品ではfsをS/PDIFのステータス
ビットで検出しているためUSBオーディオに対応できていない(ステータスビットにfs情報が入っていないものがあるため)
◇D/Aコンバータ内でのVCXOによるセカンドPLL
ジッターの影響を排除する効果があります。高級品で採用(M-51)で採用されています
◇D/Aコンバータへの外部ワードクロック入力
VCXOによるPLLが使われていればジッターの影響を排除する効果があります。高級品で採用
◇D/Aコンバータへのマスタークロック入力
低ジッターのマスタークロックであれあば、PLLを使用しないので ジッターの影響を受けません。
(M-51で採用)
◎MD-550
ジッターリカバリー性能がすぐれたレシーバーICを使用してジッター低減を行っています。
動作原理は水晶発振器をPLLで100MHzに変換しこのクロックでワードクロックをリクロック
し、リクロックされたワードクロックからPLLでマスタークロックを再生します。
測定データでジッター低減が実証さている製品です。
◎MJR-5/MJR-5W
高性能のデジタルPLLで低ジッターのマスタークロックを再生できるレシーバーICを使用
してジッター低減をおこなっています。
またクロックドライバーIC,パルストランスにも現時点で最良データの得られる部品を選択し
MD-550より優れたジッター低減効果を得ています
◎MD-3300
MJR-5で採用したジッター低減特性の優れたレシーバICを使用してジッター低減を
行っています。ジッター耐性はまったく問題ありません。
◎M-51
低ジッターVCXOによるセカンドPLLおよびマスタークロック入力対応でジッター対策を行っています。
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